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2025年08月01日号 (第547)

キャッシュレス決済の手数料と知っておきたい注意点

 みなさん、こんにちは。8月になり、暑い日が続きますね。今年も平均気温を上回る暑さが予想されていますので、どうぞ無理をせずにお過ごしください。

 さて今回は、売上代金の決済で、クレジットカードや交通系ICカードが使われた場合の注意点についてご紹介します。

キャッシュレス決済の導入のメリットとデメリット

 30年以上前、私が税理士事務所に勤めていた頃の話です。担当していた居酒屋では、クレジットカード決済で取引ごとに発生する手数料を嫌い、ずっと現金決済のみでした。代替わりを機にクレジットカード決済を導入したところ、売上が大幅に伸びたという事例がありました。

 この経験から、クライアントからクレジットカード決済やその他の電子マネー決済の導入について相談を受ける際は、基本的には導入を推奨しています。

 具体的なメリットとしては、クレジットカードは高額な決済に利用できるため、購買単価が高いビジネスでは売上高増加につながります。また交通系ICカードやQRコード決済のように、クレジット機能を持たない決済手段でも、「小銭を持ち歩かなくて済む」、「スマホで簡単に決済できる」といった利便性から、現金決済より多く利用されている業態が多数あります。

 一方、デメリットとしては一定の手数料がかかることや、毎日現金仕入れが必要な業種では、銀行で預金を引き出す手間が増えることなどが挙げられます。手数料は契約内容によって異なりますが、Suicaなど交通系ICカードの場合で3~4%程度、PayPayなどのQRコードによる決済で3%弱程度、クレジットカードの場合は2%弱から5%以上と、業態によってかなり幅が生じます。

税務上の影響と注意点

 法人税や所得税の観点から見ると、キャッシュレス決済に伴う手数料は費用になるため、コストが増え、結果的に所得が小さくなる影響があります。また現金と違って、半月ほどのタイムラグが生じるため、未収金の計上が必要です。

 消費税については、手数料を控除する前の売上高が課税標準額となるため、課税事業者であるかどうかの判断や、簡易課税が利用できるかどうかの判断に直接影響します。簡易課税を利用している場合も、計算の元となるのは手数料を控除する前の売上高なので、手数料について正しい会計処理が不可欠です。

 さらに原則課税を利用している場合、手数料の消費税区分が複雑になります。クレジット系の手数料は非課税仕入れ、その他の交通系ICカードやQRコード決済の手数料は課税仕入れとなります。したがって、明細を確認しないと正しい消費税計算ができません。

 キャッシュレス決済の比率が低い場合は、仮にミスがあっても影響が小さいかもしれません。しかし、経済産業省が発表した2024年のキャッシュレス決済比率は、実に42.8%に上ります。

https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html

 業種によっては、キャッシュレス決済が圧倒的に多いケースも現実的には存在するため、ミスがあった場合の金額も大きくなる可能性があります。例えば、年間売上1億円で、そのうち50%がクレジットカード決済だった場合、カードの手数料が3%と仮定すると、年間で150万円もの消費税額に影響が出てくる可能性があります。

 キャッシュレス決済は事業者にとってメリットがある一方で、消費税の計算などには細かな注意が必要です。特に、最近は複数のキャッシュレス決済を利用している事業者が多いため、明細書を確認しないと正しい計算が行えないようになっています。

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